珈琲についての覚書

僕が珈琲を飲むのは、ひとえに味が好きで、それを飲むことによって自分自身を満足させるためです。 飲み物で言うと珈琲だけでなく紅茶やジンジャーエール、コーラ、牛乳と豆乳なんかも好みで、食べ物にいたっては魚、肉、野菜、大体の食材が好きなので、魅力に思わない味付けは存在するものの、ほとんどの料理が好きと言っても過言ではないほどなんですが、珈琲だけはほとんど毎日飲んでいるんです。

明確に珈琲を気に入ったのは小学校高学年か中学校に入ったばかりの頃だったかと思います。当時の僕にとってかなり楽しい思い出として残っている父との散歩中、どこかのコンビニでアイスコーヒーを買ってもらって。確か散歩ゲームの Ingress がきっかけだったかと思いますが、夏の暑い日のアイスコーヒーが当時子供だった僕の喉にも確かな衝撃を与えたんでしょう。もちろん子供ながらの、少し背伸びしたい気持ちも当然混ざっていたはずですが、あの深い苦みと冷たさに魅了されたんです。おそらくそれまではまともにブラックコーヒーを飲んだ経験はほとんどなく、あってもホットコーヒー、もしくはそこに牛乳をいれたカフェオレ程度だったでしょう。

そこからしばらくはアイスコーヒーに夢中で、ただ、まだホットの魅力には気づいていなかったんですね。まあ子どもの頃の僕は熱い飲み物にめっぽう弱く、飲み方がまだ下手で猫舌が発動するし、ごくごくと一気に飲めない飲料になど毛ほども興味がわかなかった覚えがあります。

ホットコーヒーが飲めるようになったのはいつ頃でしょう。中学を卒業する手前?高専に入ってから?ここは本当に記憶が曖昧ですが、少なくとも高専2年に進級しコロナ禍に突入した頃には飲めていたはずです。いつからか温かい飲み物とも和解し仲良くなっていたおかげで、もちろん僕はホットコーヒーに取り憑かれます。といっても、この頃はまだ酸味が苦手で、深煎り専門でした。嬉しいことに実家ではハンドドリップの環境が整っていたので、たまにですが、豆を挽き、お湯を注ぎ、自らの手で抽出した珈琲を飲んだりしていました。

ところが一転、浅煎りを飲む機会があり、そこから僕の珈琲観は変わったように思います。2021年、母校である久留米高専近くにカフェファディという、業務用の冷凍食品や日用品、そして珈琲を販売しているお店があるのですが、そこで見慣れない単語をみかけ、友達と赴くことにしたんです。スペシャルティコーヒー、まあ今では一般的ですし、おそらく当時も相当いろんなところで騒がれていたであろう言葉ですが、当時の僕は一体スペシャルティコーヒーとはなんなのか、スペシャルコーヒーではなく、スペシャルティ。ティの意味もわからず、とにかくなんだか響きからして美味しそうだということで、言葉につられてファディに入りました。

品種はパカマラ、原産国はグァテマラ、農園の名前であるエルインヘルトという名を冠した珈琲をフレンチプレスで飲んだはずです。当時、酸性化した珈琲のあの嫌な酸味をひどく嫌っていた僕は、浅煎りなんてたまったもんじゃない、酸っぱい珈琲など飲むものかと思っていたのです。でも、エルインヘルトのフルーティな酸味は嫌な感じがなく、なにより僕を驚かせたのは、まるで珈琲が甘いかのような錯覚をもたらしてくれたんです。今でもそうですが、珈琲にシロップを入れたことがなかったため、牛乳や豆乳を混ぜて飲むでもない限り、珈琲を飲んで甘みを感じるなどあり得なかった話ですから、当時は相当驚き、感動し、友達とこれでもかとはしゃぎちらし、家族やあらゆる友達に話しました。あの珈琲のおかげで僕に内在する珈琲の世界が押し広げられ、それによっていろんな味を冒険する勇気をもたらし、事実美味しい珈琲にたくさん出会えたのですから、ファディとエルインヘルト農園さんには感謝ですね。

ところで珈琲好きで家でも飲む人は、みなさんどんなふうに飲んでいるんでしょうか。インスタントなのか、自分で抽出するのか。豆で買うのか、お店で挽いてもらうのか。ペーパードリップ?ネルドリップ?もちろん、ハンドドリップではなく、モカエキスプレスや、フレンチプレス、サイフォンなどなど、人によって抽出器具もいろいろあるでしょう。僕は基本ペーパードリップです。Kalita のサーバ、メリタか HARIO のドリッパ、HARIO のケトルと、アナログの温度計。ミルは TIMEMORE の C3s を使っています。ちょうど最近、水出し珈琲用の浸漬式のボトルも仲間に加わりました。まずわからないのが、結局粉の粒度ってどのくらいがいいんでしょう。もちろん、それぞれ抽出方法によって適切な水やお湯の対流が違うんでしょう。ペーパードリップでのおすすめクリック数も調べ、それに従っています。ただ、それでもやはり、豆の種類と焙煎度によって変えるべきですよね。浅煎りと深煎り、豆の種類で水分量や油分も変わるでしょうし、ピーベリーみたいな形が違う場合はそもそも構造的に一般的な豆とは歯のあたりが違いますよね。この違いに対応するのは、やはり経験がものをいうんでしょうか。それとも、そんなに変わらないのかな?

閑話休題、最近、といっても 2 年前ですが、僕に衝撃をもたらした珈琲があります。ゲイシャ、最近人気ですね。まあ僕がそれを知り気に入ったからよく目につくようになっただけかもしれませんが、2024 年の SCAJ で出会ってから、ずっと恋しています。ゲイシャ、初めて飲んだときはエルインヘルトを飲んだ時に引けを取らないくらい感嘆しました。まさかこんな香りで、こんなフルーティな珈琲があったのか、と。まあゲイシャくんは珈琲の中では新参者とはいえ僕より早く生まれているのですが、SCAJ で試飲させてもらうまで似た珈琲も飲んだことがなかったんですね。

普段外で飲む珈琲といえば、職場から近い豆香房さんで買う珈琲ですが、たまに映画を見る時なんかは日比谷の映画館に行くんですが、その時は決まって GESHARY COFFEE HIBIYA さんでゲイシャを飲みます。ゲイシャ種といえば紅茶を思わせる独特なフルーティさですよね。まあもちろん高いんですが、珈琲が好きで、酸味も嫌いではなく、まだゲイシャを飲んだことがない方、いたらぜひ飲んでみてください。

長いこと珈琲を飲んできて、おそらく人生の半分以上は付き合ってきている飲み物ですから、上記の通り覚えているうちで特に色彩を帯びた記憶を書き連ねてみました。目下のところ目標は美味しい珈琲を淹れるためのハンドドリップ技術向上です。付き合っていくうちにまた色々あるでしょうから、なにかあればまた書きたいですね。ゲイシャと、失われた時を求めてにつられて最近は紅茶にもハマっていますから、トワイニングとか、マリアージュフレールの美味しいお茶についても書いてみたいですね。